半兵衛

イグアナの夜の半兵衛のレビュー・感想・評価

イグアナの夜(1964年製作の映画)
4.0
挫折した大人がどん底まで落ちながらも、様々なトラブルに巻き込まれながらなんとか這い上がろうとする姿は歳を重ねれば重ねるほどに味わいが増してくる。そんな主人公を演じるリチャード・バートンの激しい感情表現をしつつも、適度に肩の力を抜いたバランスの良い演技も見事。元神父のわりに胡散臭いのもこの物語にぴったり。

出てくるヒロインもそれぞれ魅力的で、若々しい魅力を放つスー・リオン、包容力のある優しさと凛とした姿が美しいデボラ・カーが画面を彩る。そしてこの映画で最も光輝くのがエヴァ・ガードナー、男勝りでさばさばしたホテル経営者で、腐れ縁で密かに惚れているバートンを何かと気に掛ける。最初は明るい中年女性(演じるエヴァも往年の美しさとは程遠い体型になっているので)にしか見えないが、最終的には繊細な乙女心と人情味を披露してヒロインとしての存在感を発揮する。特にラストのバートンを見つめる少女のような目付き、あれにやられる。

舞台となるメキシコの湿った暑さをにじみ出す白黒の映像も印象的。

元が演劇なので台詞が芝居臭いのが気にかかるけれど、それでも映画として成立させる監督やスタッフの手腕に感服。

ホテルの使用人で上半身裸でマラカスを振る男二人がたびたび登場するが、アダルトな雰囲気のドラマと空気があまりにも違い『有吉の壁』みたいになるので妙に笑えてしまう。そんなふざけた奴らなのに腕っぷしが強いのも最高。

ちなみにメイキングで当時リチャード・バートンと付き合っていたエリザベス・テイラーが堂々と画面に登場するのに驚かされる。
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