よつゆ

殺しが静かにやって来るのよつゆのレビュー・感想・評価

殺しが静かにやって来る(1968年製作の映画)
4.7
「こいつが先に撃ったよな」
クラウス・キンスキーに悪役を演じさせれば右に出る者はいないのではないか、というくらい、悪役としての存在感が凄まじい。

主人公サイレンスは、声帯を失っており台詞がない。
そのためか、主人公よりも敵のクラウス・キンスキーの印象が強い作品だと思う。

雪が一面に降り積もる銀世界で繰り広げられる西部劇。
美しい世界の中繰り広げられるのは残酷な物語である。
喋れない殺し屋、夫を殺された人妻の復讐、冷酷無比なアウトロー、全ての要素が好き。

以下ネタバレ🐜🐜🐜🐜🐜








物語自体は復讐劇とわかり易く、終盤までの悪役への精神的な鬱積が凄まじい。
これによりカタルシスが描かれると思ったら大間違いである。
本作は悪役たるキンスキーが主人公サイレンスを殺して幕を下ろす。

勧善懲悪が描かれると誰もが思うだろう。
あれだけわかり易く悪役が描かれているのだから、成敗されるに違いないと。
しかし本作はあまりにも無慈悲で、唐突に終わりを迎える。
あまりにも衝撃だった。
キンスキーがもだえ苦しみ、それに鑑賞している者はカタルシスを感じるエンドを予想したし、ギリギリまでそう感じさせるミスリードがされていた。
にも関わらずサイレンスはキンスキーの部下の銃弾に倒れる。

世界観、物語、そして終幕まで、圧巻の作品だった。
よつゆ

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