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スタンド・バイ・ミーのotomisanのレビュー・感想・評価

スタンド・バイ・ミー(1986年製作の映画)
4.5
 死者1名、実弾2発、無法者との対決、流血(ヒル撃退)に野宿ありの小冒険のあと、日曜の早朝の4人の別れ際が良かった。二日前には、いつかおん出てやる田舎が、この時、のちのちここを巣立ったと追懐できる場所になったような美しさだった。
 例え小冒険でも、日常楽しくふざけてばかりの子供から、日ごろ言葉にできない話を絞り出させてしまう。未来の小説家と弁護士が心の痛みを打ち明けて何かになったのか、実はよくわからない。しかし、結果、二人に間もなく訪れる、人生を賭ける対決に必要な、腹が出来たのだと思った。言うまでもなかろうが小説家は、傷心の余り心を閉ざしたふた親との和解が必要であり、弁護士には肉親である悪党どもとの決別、さらに町民1400人の白眼視に耐え偏見を覆すことが必要である。弁護士が別れ際、小説家の再会のねがいに「あえるかな」と返したのは身の証の困難さが身に沁みての事だし、中学での彼のたいへんな努力を小説家はよく知っている。
 友の少ないだろうふたりは互いを熱い友情や固い絆を持つ同士などと感じたのではあるまい。しかし、この小冒険は、互いを特別な相手と感じ、心境を変えるきっかけをもたらした契機となり、こういう相手は恩人というのべきものだろう。小説家の綴る、12歳の頃のたった4人の中の特別な二人とは後にも先にも他にない友人であったとは、恩人という、そういう者なのだ。
 一方小説家は、たくましく想像するまでもあるまい。作家活動まずまず。妻、多分なし。息子ひとり? でも一見うまくやってそうじゃないか。先週知人を一人失ったが、ついに小冒険で語らった「おれたちのこと」を世間によみがえらせるに至ったのだ。ありがたい物語だった。
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