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ドラえもん のび太の魔界大冒険のmochiのレビュー・感想・評価

4.3
素晴らしい作品だった。雲の王国と並んで今まで観たドラ映画で一番。しっかり怖いところがいい。ダークな作風を序盤でしっかり示唆して、それを回収していく作風が良い。
この作品の素晴らしい点は科学と魔法の一般的な理解を切り崩している点。結局我々は科学主義的パラダイムの住人でしかない、という点が重要なのだと思う。
出来杉との会話で「魔法はなくなっちゃったの?」「うん。なくなった。」というものがあったがこの応答がまさに重要である。科学的なパラダイムを受け入れる我々の世界では「魔法なぞなかった」と考えられている。しかし魔法は「ない」わけでも、「なかった」わけでもなく、「なくなった」のである。単純に物事の実現に魔法という概念が使われなくなったというだけで、魔法的なものを我々は科学によって獲得したり、科学という概念を用いて説明言表を与えているだけである。だから、中世の人が今の我々の生活を見たら、魔法の実現だと思うはずである。変わったのは世界の側ではなく、我々の世界の見方である。このことをよく表しているのが、もしもボックスを用いて魔法を実現した後の世界である。魔法という概念は確かに復活したが、我々の態度は何も変わらない。科学により獲得した自動車や自転車はなくても、空飛ぶ絨毯とホウキがある。自動車免許はなくても、空飛ぶ絨毯の免許がある。科学の勉強はなくても、魔法の勉強がある。このような表現により、我々の生きている世界の見方を揺さぶることをおそらく意図している。
しずかちゃんの描写の仕方は今なら問題になるかもというレベルだった。またもしもボックスによる世界の実現には謎がたくさんある。結局パラレルワールド生産機だが、その前からパラレルワールドの世界にはドラえもんやのび太が存在していたわけで、その意味でパラレルワールドは生産されるより前にあった気がするのだが、「僕が作り出してしまった」というような言い方をしているのが難しかった。
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