パン

ストレート・タイムのパンのレビュー・感想・評価

ストレート・タイム(1978年製作の映画)
4.9
本作は日本語で配信やブルーレイ発売がされていなかったので、仕方なく海外版ブルーレイを英語字幕をつけながら鑑賞した。 
でもこれが中々英語の勉強になるし楽しかった笑 

冒頭、刑務所を出所したばかりでホットドッグを注文する男…
ダスティンホフマンに犯罪者の役ってあまり似合わないような気がしてたが実際に観てみると別人かと思うほどめちゃくちゃ似合ってた。

彼の役者魂は凄すぎる。
今までは卒業や真夜中のカーボーイとか弱々しい童顔男の役が多かったのに、この映画では完全に本物の職業犯罪者に成りきっていた。
この変貌っぷりが半端ない。
目に光が宿ってなくて冷めた感じの鋭い眼差し。
本当に刑務所にでも行ってたのか?と疑うほどだった。

この映画は自分が変わりたいのに変われない、強盗という生き方しか出来なかった男の物語だ。
一度は真っ当な道に戻ろうとしても結局悪の道に戻ってしまうのである。

序盤でネチネチした性格の保護観察官フランクとの会話が良い。
マックス(ダスティンホフマン)がややキレ気味に「自由な気分になりたかったんです。歩き回って明かりを見たかった。10時に寝ろって言われたくなかった。」
とあくまで普通の生活を望んでいることを打ち明けるマックス。
自分は社会にとっての脅威じゃないし、普通の人のように働いて普通に食べれる生活がしたいだけだと熱弁する。

彼も本人なりに社会に適合出来るように必死にもがいて頑張ってるんだよな。魚が陸で生きようとするが如く…
しかし本人の努力も虚しく今度は冤罪で豚箱に逆戻りするという胸糞展開。

フランクを道路ですっぽんぽんにして放置したの楽しかったw
シリアスな映画だからこそこういう少しの笑い要素がありがたい。

前科持ちなのに何の偏見もなく普通に接してくれるハロワで働くジェニー。
この決して綺麗ではない寂れた雰囲気の映画で唯一の癒し要素だった。
彼女の存在は良いね~

そんなジェニーにだけはマックスも心を許す。
社会からは疎まれ、人生を半ば諦めながらもこの僅かな幸せを手放すまいと必死にしがみつこうとするマックス。
ジェニー役のテレサ・ラッセルが美人すぎて絵になる。

あとキャシーベイツが出演してたけど若くて細い! 
そりゃ生まれた時から太ってたわけじゃないものね。そういう役が多いだけで。痩せててもミザリーとはまた違った独特の雰囲気あるね。
若い頃からただものじゃないとわかる存在感バリバリの女優だった。

中盤以降の銀行強盗シーンや宝石強盗シーンはそれまでの鬱憤全てを目の前の犯罪に全身全霊ぶつけるかのような獣性を発揮していてマックスのことが本気で恐ろしいと感じるほどだった。
あの童顔男のイメージが定着していたダスティンホフマンをね。
ここのシーンは震えるくらい良い。

この70年代アメリカ映画のやるせない感じが心に染みる。
迫力と虚しさの両立。
ラストのジェニーとの別れ方も切ないなあ…

これだけ素晴らしい傑作なのにフィルマークス内での評価が低すぎる。
そもそもレビューも少ないね。
是非国内版ブルーレイを出してほしい。
出来れば日本語吹替付きで…

俺も企業相手に地道にメールしてみる。
キングレコードとかマクザム社あたりがやってくれないかな。
これを読んだ人も是非協力して欲しい。実現すると良いんだけどな。
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