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サイコのmasayaanのレビュー・感想・評価

サイコ(1960年製作の映画)
4.6
どうやら久しぶりに何本か(所詮DVDなんだけど)映画を観れそうだ、となった時に、最初に思い浮かんだのはヒッチコックだった。

理由はいくつかあるのだけど、まず、38年の『バルカン超特急』こそが、自分にとっての映画の理想形に限りなく近いのだということが、時間が経つにつれて理解できるようになってきたこと。一応断っておくと、それは、『バルカン超特急』が5.0点の映画であることを意味しない。少し迷うが、いま付けてある4.4というスコアも修正しなくていいと思う(同点になっていた『めまい』は今、あわてて4.6に修正したけれど。『裏窓』は、まあいいか)。気軽に観れて、適度にハラハラして、笑えて、ロマンスとハッピーエンドがあって。「ああ、たまにはのんびり映画でも観てえなあ」となるときに、決まって心に浮かぶのが『バルカン超特急』だった。仮に、<ヒッチコック傑作選投票会>みたいな場に呼ばれたとしたら、「どうせみんな『めまい』だろうから、俺は『バルカン超特急』にしとこ」と、そう思える愛すべき作品だ。

それと、もう一つ。シネフィル気取りの必携書とでもいうべきトリュフォーとの『映画術』が、長い間積読のまま放置されていること。これも、ここ数年ずっと心に引っかかっていた。メルカリに出して、これを読むべき人に引き取ってもらおうかと、何度か考えた。もちろん、本ならば今の生活でも読んで読めないこともない。ただ、問題があって、なんと主要作品の中で『サイコ』と『鳥』が未見なのである。無駄に律儀に、主要作(確か13作ほど)を時系列で観ていたら、ここまでたどり着けなったわけだ。これを観る前に読んでもさすがに意味がないだろうと。これがつらかった。この映画ご無沙汰状態で、主要作も未見で、しかも積読のままの『定本 映画術』を手放す。手放さなくても読めない。これはつらいよ、君。

というわけで、『映画術』を本棚に積んだまま(正確には、モノが大きすぎて立たないため、横倒しにして差してある)、ついに『サイコ』を見ることができた。それだけで4.6は許されるというものだけど、まあそれを差し引いても<ヒッチコック傑作選投票会>では間違いなく上位5作に入るだろう。なんとなく、どんどん完成度が上がっている時期の作品であろうから、もっと「重たい」のかと覚悟していたけれど、確かに『バルカン超特急』の監督のようだ。幾分ハラハラ要素が強まり(音楽はどうかな、これは)、ハッピーエンドでもないけれど(最後の自己解説的な〆はやや野暮)、「映画っておもしれえなあ、やっぱり」って気持ちにさせてもらえました。浴室と階段。いや、階段の映画か。
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