leyla

流れるのleylaのレビュー・感想・評価

流れる(1956年製作の映画)
4.2
安定した面白さの成瀬巳喜男監督作品。原作・幸田文。

芸者の置屋を舞台に、芸者たちの悲喜こもごもを描く。時代の流れや女将の裁量の無さによって落ち目になった置屋がどれだけお金がないか、芸者たちがいかに男運がないかなどを、女中(田中絹代)の目を通して見せていく。

特に誰が主役ではなく、淡々と抑揚もなく置屋での出来事を描くのだけど、キャラに愛着が湧いていくため後半でどんどん惹きつけられる。

女にとって男が要るか要らないか、そんなやりとりが交わされる。男の存在がないと生きにくい時代に生きる女性たちの姿。

・品があり気が利く女中の田中絹代
・人がよすぎて商売に向いていない山田五十鈴
・女将の娘で気が強く、芸者は継がない高峰秀子
・したたかさが見え隠れする粟島すみ子
(19年ぶりの女優復帰だそうです)
・そして一番目を惹いたのが杉村春子!
飄々としてズルいのに愛らしい。本当に素晴らしくて、ますます好きになりました。

これだけの大女優たちを使い、適材適所の配役とキャラを際立たせる演出。女性を描き続けた成瀬巳喜男監督の手腕が光ります。

ラストの山田五十鈴と杉村春子の三味線の共演に、あぁこの人たちはこうやって流れるままに生きて行くのだなぁと思うと愛おしくなる。川と掛けたタイトルの短さが奥深いのです。
成瀬監督のエンディングは、いつもセンスがあってジワるな〜
leyla

leyla