けーはち

おおかみこどもの雨と雪のけーはちのレビュー・感想・評価

おおかみこどもの雨と雪(2012年製作の映画)
3.0
狼男🐺との子供2人とシングルマザーとのファンタジー家族劇長編アニメ映画。時かけ・サマウォで名を上げた細田守監督がその余勢を駆って初めて自ら脚本に共同参画した1作。

❶どれほど近くに居ても動物や自然と人間社会には境界線を引かねばならない
❷どれほど大切であっても子はいずれ独立し親と別の道を行かなければならない

という普遍的な真理2つを並行して1つの家族の物語として描く視点はおかしくはないのだが、そのセットアップまでに監督の描く価値観の狂った部分が多々ありすぎるのを無視しなきゃならない点が問題な気がする。

大学中退して狼男との結婚・妊娠・出産に踏み切った後、何となく縁もゆかりもない田舎の古民家に移住、女手1つでリフォームし田畑を耕しながら子供を育てるといった、田舎生活やシングルマザーの苦労をナメた生活観・経済観念などの甘さや親類縁者もない土地での母親1人に帰する責任負担の過大さといった部分は、いかにファンタジーとは言っても現代日本をベースにしている以上は批判を免れない所。

他、狼男が完全に狼の姿で死んでそのままゴミ袋に詰められて廃棄されるのも悲劇的なシーンなのにシュールで馬鹿馬鹿しくてちょっと笑ってしまうし(絶滅種ニホンオオカミの死骸が街中で見つかったら清掃員は淡々と燃えるゴミとして収集車に放り込むのだろうか)クライマックスの母子の別れもさすがに避難勧告が出る規模の雨嵐の中を徒歩で山へ踏み入るのが中々のツッコミ所よ。

画は動く所は動いて動物や自然の美しさはよく表現されているし子供や動物(狼)の可愛い部分、可愛くない部分とも相当イキイキと活写されていると思うが、獣人の半裸姿や時かけ・サマウォでもあったグシャグシャな泣き方からはファミリー向けではない変な嗜癖のこだわりが仄見え、かつてポストジブリと謳われてその座に居座れなかった要因が本作からジワリと滲み出ている。

美少女・天才子役のイメージだった宮崎あおいに獣姦出産からのシングルマザー奮闘記をやらせた変態性については高く評価しているがいささかその観点はアングラすぎる。