りょう

蜘蛛巣城のりょうのレビュー・感想・評価

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)
3.4
 ウィリアム・シェイクスピアに興味があるわけではないので、「マクベス」のこともほとんどわかりません。この時代の日本映画の特徴なのか、とにかくセリフが早口で不明瞭…。物語の展開をなんとか理解できる程度になってしまったのが残念です。
 三船敏郎さんや山田五十鈴さんの表情など、俳優さんたちの演技で魅せるシーンは多々ありますが、物語そのものに惹かれる要素がありませんでした。“もののけ”とされる老婆の預言が鷲津武時の心境に影響したことは理解しますが、人間の本性の恐ろしさを表現するモチーフとしては、こういうスピリチュアルな要素が逆効果だった印象です。
 大掛かりなセットと多数のエキストラの登場でスケール感はありますが、ほとんど合戦シーンがないので、少し物足りません。戦国武将をめぐる人間ドラマなら、もっと人物描写だけを強調したものを期待してしまいます。
 ただ、ラストシーンの弓矢の嵐は圧巻でした。いろいろな撮影技術を駆使しているようですが、やはり本物の迫力は格別です。
 国内外で絶賛されている作品なので、その感動を共有したかったのですが、こういう文学的な価値を理解できる素養がないようです。映画を表面的に観てしまうことを反省するばかりです。「マクベス」の映画化にはいろいろあるようですが、ジョエル・コーエン監督の2021年の作品を観てみたいと思ったら、AppleTVの配信か…。
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