Omizu

華麗なる一族のOmizuのレビュー・感想・評価

華麗なる一族(1974年製作の映画)
5.0
【1974年キネマ旬報日本映画ベストテン 第3位】
社会派映画の巨匠・山本薩夫が『白い巨塔』に続いて山崎豊子の小説を映画化した作品。佐分利信、仲代達矢、京マチ子ら大スターの競演ということもあり1974年配給収入4位の大ヒットとなった。

さすが山本薩夫。3時間半もの物語を骨太で濃厚な演出で見事に描ききっている。一瞬も飽きることなくとてつもなくリッチな画面に圧倒された。今のところ山本薩夫作品に外れなし。

虎視眈々と下剋上を狙う都市銀行の頭取とその周辺をサスペンスたっぷりに描いている。この万俵家の面々が濃いのなんの。

冷徹な頭取万俵大介(佐分利信)、実直な長男鉄平(仲代達矢)、ひねくれた次男銀平(目黒裕樹)、政略結婚に従う長女一子(香川京子)に自由に生きようとする次女二子(酒井和歌子)。これだけでも濃すぎるのに子どもたちの家庭教師兼大介の愛人相子(京マチ子)に彼女を見て見ぬ振りをする大介の正妻寧子(月丘夢路)らが加わるもんだからすごい。

『戦争と人間』でも思ったけど山本薩夫は色彩設計が特に優れている。人物の衣装や美術でその場の空気感を100%伝えているしなにより画面が華やかになる。メイクも素晴らしいと思う。

策略と野望、家族内の確執をこれ以上ないほど濃密に描いた至極の3時間半。正直者が馬鹿を見る日本社会の残酷さを描いた傑作。
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