いぶりん

真夜中のカーボーイのいぶりんのレビュー・感想・評価

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
4.5
大好きな映画の1つ。久々の鑑賞。

テキサスのド田舎からニューヨークへ一攫千金を夢見てやってきたカウボーイの青年ジョーと、そのニューヨークの底辺で生きる足が不自由なリコとの友情物語。

何とも地に足のついていない夢を抱き都会ニューヨークに向かう青年ジョーが主人公なのだが、話が進むにつれ現実の厳しさに直面してゆく。その様が観ていて本当に辛い。
そんな中でドブネズミのように生きる男との出会いにより、少しだけ毎日が変わっていく。最初は信頼しておらず険悪であった二人の間に友情が芽生える様に心温まる、現実は寒々しいのだが。

このジョーの過去のフラッシュバックと妄想が入り乱れた映像の時の表現が私はとてつもなく好きだ。カウボーイであり続けるのもゲイである事実を押し隠したいからなのだろうか、彼の祖母の相手がカウボーイだったことから「愛されたい」気持ちの現れでもあるのだろうか、少なくとも自分の弱い部分を隠すための装いではあるのだろうな。ニューヨークのリアルな街並みも映しながらも、度々サイケデリックな幻想的映像も差し込まれるのがとても良いんだよ。セックスやドラックに塗れたこの時代だからこその空気感も格別。

最後のジョーの表情は冒頭とは打って変わって現実を受け止め地に足つけたものとなっている。結局のところ二人の最初の夢はかなっておらず地に足つけるしかない様はやるせないともとれる、のだが私は希望に満ちた優しいラストだと受け取る。カウボーイ姿をやめた時点で自分の過去とも決別できたんじゃないかな。私はこの心地のいいほろ苦さと彼のその変化だけで気持ちが良い。

私にはリコやジョーみたいな人間に出会えるのかな、そしてなれるのかな、と映画が終わってからいつも思う。男の友情物語は映画においてたくさんあるけれども、この映画がその中でもダントツに好きだ。どんな恋愛映画よりも愛情深い二人を見れるんだ最高。リコの妄想の中には何だかんだジョーも居るのが愛おしい。
どれだけ苦しくっても、小便まみれなっても、となりで冗談言って笑わせてくれる友達が居るだけでいいじゃないか。私もいつだって現状に打ちのめされているのでね、いつも冗談言って吹っ飛ばしてくれる友人たちを更に大切にしようと思った次第です。
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