りっく

仮面/ペルソナのりっくのレビュー・感想・評価

仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)
4.2
冒頭から女性たちの顔が完璧なアングル、サイズで連ねられる至福の時間。そこにまるでホラー演出のような呼吸で意表を突いたショットを挟み込み脈を乱すスリリングな映画であり、それが単なるイメージ映像の羅列ではなく、この映画自体を取り囲み閉じ込める構造の妙に唸らされる。

人間は個々の相手やシチュエーションに合わせて演じる動物であり、上手く演じることができなければ疲弊し、上手く演じられたとしても嘘やお世辞を言う自分を嫌悪してしまう。そんなアイデンティティを巡る出口のない虚無や絶望がモノクロームの光と影に濃密に凝縮されて、そこに理性で抑え込まれる性の匂いさえ漂わせる。

だからこそ、人間は俳優と同様に演じるしかないのか。だとすればこの世はスクリーンの中の映画と変わりないのではないか。スクリーンの内と外の境界を越えて、ベルイマンが提示する問いかけは、現代の生きづらさにも通ずる普遍性がある。
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