marutabatsuo

M/OTHERのmarutabatsuoのレビュー・感想・評価

M/OTHER(1999年製作の映画)
4.6
とんでもない傑作。ほぼすべてのシーンがプロットのみの台本なし撮影という特殊さゆえ、息づかい、心臓の音まで聞こえてくる異常なまでのリアルさ。諏訪監督の演出、三浦友和、渡辺真起子の演技は今後も日本映画史に残り続けるだろう。

元妻と別れ、同棲する中年男女。愛し合う生活を送っていたが、ある日男が8才の息子を連れて帰ってきたことから大きく揺れ出す。
母親を忘れられず拒否する子、受け入れない子にイライラし、連れてきた男を許せない女。表面は取り繕っても、全員がぎりぎりの精神状態。

時に打ち解けたかと思うと、次の瞬間に張り詰めていた気持ちが爆発。互いへの想いだけだはどうしても越えられない壁、家族と愛憎のカタチを逃げることなく捉えた傑作だ。
ラストシーンでようやく部屋全体に射す光。あれは前向きな光だと思いたい。

それにしても三浦友和の凄さよ。若い頃のイメージから単なる二枚目俳優と捉えられがちだが、現代日本最高の俳優のひとりだと思う。もっともっと評価されるべき人

国立映画アーカイブにて