シミステツ

ビフォア・サンセットのシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

ビフォア・サンセット(2004年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

「あの日」から9年後。セリーヌとの出会い、「あの日」の出来事を本にすることで記憶から記録、物語へと美化されていったジェシー。セリーヌは祖母の葬儀で12月16日に行けなかったという。環境保護など意識の高いセリーヌを描くことでジェシーとのいたって私的な関係、理想と現実の対比が浮き彫りになる。理想に埋もれてあの日に固執して身動き取れないジェシーと、記憶をしまい込み自分を生きるセリーヌといったところが絶妙なニュアンスで見え隠れする前半。

ジェシーもセリーヌもお互いに結婚して子どもがいるというのが中盤にさりげなく分かって勝手に辛くなった。ウィーンで再会してたら人生が変わってたかもしれない。人生を狂わすほどの運命。「怒れる躁鬱病の活動家」っていうジョークはおもろい。何度も夢に見るという話はグッときたし、冗談を言い合いながら裏腹な本心が愛しくも見え隠れする二人の関係性が素敵。最後のワルツはとても豊かで美しかった。ジェシーは本に、セリーヌは歌にしてたんだね。物語の終わりがとてもよい。この二人の関係性がまだ続くかのように締められているから。そう、飛行機なんてどうでもいいんだよね。この時がずっと続けばいいのに。


「母から聞いたけど子供のころ私遅刻の常習犯で不審に思った母が後をつけたの そしたらクリの実が木から落ちて舗道を転がったり アリが道を渡ったり そういう小さいことを見てたって 人に対しても同じ 細かい所に目が行っちゃうの そして感動して忘れられなくなる 人はそれぞれ美しくて特別なものだから ひげに赤毛が交じってたこととか 別れの朝それが太陽の光で輝いてたこととか そういうことが恋しかった ヘンでしょ?」

「本を書いた本当の理由を知りたい?」
「ええ」
「サイン会に来た君に”どこに行ってた?”って聞くためさ」
「来ると思ってたの?」
「冗談抜きに君を見つけたくて書いたんだ」

「何もかもあなたの本のせいよ あの本のせいであの時の自分がどんなに純粋で希望に満ちてたか そして今の自分がどんなにドライかが分かったの 恋する気持ちをあの一晩で使い果たし もう何も残ってない あの夜が私の感情を奪い あなたが私の心を持ち去ってしまった」

「私にとって愛と現実は相反するの」

「本当に溶けるか試したいの」

「1曲歌ってくれないかな」

「あなたの歌だと思ったの?バカね」

「ベイビー、飛行機に乗り遅れるわよ」
「分かってる」