はぐれ

春のソナタのはぐれのレビュー・感想・評価

春のソナタ(1989年製作の映画)
4.2
ロメールの四季の物語シリーズの第一作。哲学を教える教師と官僚の娘と、その父親である官僚とその恋人(広告代理店勤務)の話。

娘のナターシャ以外のインテリの3人が自らの知識をひけらかしてマウントを取り合う会話劇。特に広告代理店の女が業界人特有の特権階級に酔った奴で専門用語を羅列してきて性格がとにかく悪い。交際中の男の娘に「こんなことも知らないのか?」と哲学問答を仕掛けてきて相手のプライドをズタズタにしてくる。そんな業界人に「それでも私は哲学の成績はAだったわ」とやり返すナターシャがめっちゃくちゃカワイイ(笑)

しかしただカワイイだけじゃなくて実は彼女が一番哲学を理解していたのでは?と観客に思わせてしまうところがロメールの上手いところ。政治家の答弁みたいに難しい言葉や横文字ばかりで感情が伴っていないインテリ連中に比べて、感情の赴くままに発言をするナターシャの方が金言を発するのだ。
「パパは芸術家に向いていないわ。自分には厳しすぎるし相手を褒めすぎるの」「あなたが怒ったら冷静な人が誰もいなくなるわ」
いや、わかってるなら自分がキレるなよ!wってツッコミたくなるけど良い台詞だよね。真理をついている。結局勉強の量にしがみついてもろくなことはなくて、それをいかに実社会に活かせるかが重要だよね。専門用語が飛び交う会話は1ミリも憶えていないけど、ナターシャの発言は思わず膝を叩きたくなっちゃうほど関心したし今でも頭に残ってる。

新緑が鮮やかな色彩に富んだ画作り。どのシーンを取ってもロメール。目にも耳にも楽しい秀作。
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