Jimmy

杏っ子のJimmyのレビュー・感想・評価

杏っ子(1958年製作の映画)
4.3
池袋・新文芸坐での『成瀬巳喜男監督特集』で鑑賞。

売れっ子作家(山村聰)の娘(香川京子)、そしてなんとも情けない夫として、木村功がマイナスの目立ち方がハンパでない。

「昭和22年」、作家の娘(香川京子)は、いろんな人から結婚候補に挙げられていたが、電気部門が得意な貸本屋で少し作家を目指している男(木村功)と結婚する。
この時、香川京子の「お父さんは、100円を1000円に使えって言うんでしょ」なるセリフはなかなか面白い。

そして「昭和25年」、結婚した二人は貧困の中で生活しており、夫は作家を目指すがいかにも才能無しというあたりが哀しい。
最初のうちは、妻(香川京子)も「人間って、いつも一番良さそうな偶然に身を任しているんですわ」なる前向きのセリフがあるが、だんだんと荒んだ生活になっていくあたりの描き方は、さすが成瀬監督。

中盤から、ほとんどが夫婦のゴタゴタ、そしてヘタレ夫の描写が凄い。
この夫役の木村功は、上手いんだろうな、きっと。

父親(山村聰)の「夫婦はお互いに損をするんだ。女は生涯の損、男は一時の損」なるセリフは凄過ぎる。


ものすごく、シビアな成瀬巳喜男監督作品であった。
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