ニューランド

時よとまれ、君は美しい/ミュンヘンの17日のニューランドのレビュー・感想・評価

3.2
公開当時は、月に1回映画館に行くリズムで暮らしてたので、本作はオミットした。しかし、映画雑誌の記事なんかを読みながら、興味はあった。8人の監督も大家というより、曲者揃いで、このメンバーでの当時の個人的ランキングは、順に①シュレジンジャー②ペン③フォアマン④崑⑤ルルーシュといったところで、ゼッタリングは名前を聞いたことはあっても観たことはなかった。あとのふたりは名前を聞いたこともなかった。
今回初めて観ると、勝者や栄光は敢えて皆避けてるようで(崑はやや別)、勇ましさ・輝かしさは触れないひねくれた、映画100年の時覚えた言葉でいうと、スマグラー的ポジションの作品が主になっている。例の選手村での大事件も、シュレジンジャーが冷ややかめに触れてるだけだ。
その中、関心・認知度の薄かった3人の作品が直球勝負で好感は持てた(未だに見ていない1人は、今もずっとスクリーンで見てみたいと切望している史上最大の超大作『ヨーロッパの解放』の監督であることを今回知らされた)。競技スタート前の選手に限らない様々な関係者の調整感、縁のなかった重量挙げのチョイスへの純粋な興味、少し前の時代までの脇からメインにも出てきた女子選手らの落ちつかなさを、てらいなく捉えてゆき、高速モンタージュ速まりへも。
それらに比べると、流行著名監督らは、自在に余裕までみせる。異常に長いアウト・フォーカス導入部から周囲が光量不足で暗く落ちるまでのスロー駆使のペン。長く多様な競技を、音楽演奏光景と進行並走させるフォアマン。格闘技他の敗残感に付き合うルルーシュ。シュレジンジャーは、世界・周囲の動きにも目を閉ざし、只、競技宇宙にだけ呼吸と意気を整えてく1ランナーを、客観的・正確・操るように、皮肉に捉え、フィクションの珠玉の掌編の味わいに近い。堅実英国時代から、米国と往き来しながらの絶頂期のシュレジンジャー。『~カーボーイ』『日曜日は~』『イナゴの日』我々もワクワクしていた。『マラソンマン』で割りと普通の人に戻ったが。
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