mochi

街のあかりのmochiのレビュー・感想・評価

街のあかり(2006年製作の映画)
3.6
敗者三部作の最後を飾る作品。これで三部作を完走した。個人的には「浮き雲」が一番好きで、この作品が三番目かな。前二作に比べてストーリーがしっかりしている分、人物の愛おしさや魅力が薄くなっている気がする。愛した女の人が実は騙そうとしていました、というのだけでも一本映画が撮れそうではあるんだけど、あえてそのネタバラシは観客に対してとても早く、なおかつ主人公が嵌められるのもとても早いのは特徴的。これはあくまでストーリーの一部であり、その後の顛末も含めて、一本の物語として完結しているのは、カウリスマキっぽいなぁと思う。愛した女の人が主人公の見方をしたりしないのはとてもリアルだし、殺害が失敗するのもそりゃそうなるよなという感じ。ラストシーン難しいな。身の丈にあった幸せが大事ってことなのかもしれないけどそれだと浅すぎるしなー。「ここでは死なない」という現状を維持する姿勢は、これまでの希望や夢ばかり語っていた主人公との対比になっていると思うんだけど、その対比によって何を伝えたいか(ラフに言えばプラスかマイナスか)、みたいなところを読み取るのは難しかった。もしかしたらそんなものないかもしれないんだけど。犬が最後出てくるのもうまく場面を関連づけているなーと思った。あと、もう少し音楽に魅力があると、もっとカリウスマキって感じがすると思いました。
初めて愛する女の人に出会ったシーンのカフェでの会話とかやばいくらいかっこよくて、ここはさすがカリウスマキって感じ。
「過去のない男」が生まれ変わりを描くとするなら、この映画はある意味で生まれ変わりの失敗を描いているのかな。刑務所での生活は彼の英気を養っているし、出所直後の生活はとんとん拍子だし、手紙を破り捨てるシーンは、過去の自分に関するものを経とうという姿勢に見える。だけど、結局本作は生まれ変わりに失敗する。こういうふうに見れば、「過去のない男」と対比して理解できるのかもしれない。
あと、カティ・オウティネンは今回は一瞬だったけど流石の存在感。
mochi

mochi