片腕マシンボーイ

近頃なぜかチャールストンの片腕マシンボーイのレビュー・感想・評価

近頃なぜかチャールストン(1981年製作の映画)
3.8
政治が信用ならないのは今も40年前もなんも変わらんのよ……

婦女暴行未遂で捕まった童貞ブルジョワ少年ジロウがブタ箱で出会ったのは、日本から独立した国家ヤマタイ国の閣僚を名乗る奇妙な老人たちだったよ!って話

喜八さんのん久々に観たいよ〜って観たよ!
冒頭からズボンを下げて夜の公園で女性を追い回す主人公ジロウのイカれた姿に令和を生きるマシンボーイは度肝を抜かれるわけやが、未遂に終わりとっ捕まったジロウにブタ箱で相部屋となった見ず知らずの老人たちが童貞の大切さを説くシーンにたまらずしんみり……
ってそんなホッコリ生優しい作品では無いんよ!ギョエーってコロコロコミックみたいなリアクションなるような強烈な場面でいっぱいの素晴らしい喜八映画やったわぁ、ぺろぺろ

そうね、喜八さん独特な喜劇タッチの作品なんやが、そのベースには反戦のみならず、戦争を忘れて浮かれる時代への皮肉が込められた怪作でして、軽やかなジャブに紛れて強烈なストレートを打ち込んでくるような凄まじい作品でしたね

本作でなんと言っても魅力的なのはヤマタイ国の閣僚である7人の老人達ですよねぇ、かつて戦争を体験した老人達が今の平和ボケした日本や、腐敗した政治に嫌気がさし、ある民家をヤマタイ国とし日本の法の外で暮らしているのであります
ところが日本の国会議事堂を表敬訪問した大蔵大臣以外の6閣僚、帰りにうっかり大蔵大臣もいないのに定食屋に入ってしまったからば、さぁ大変!無銭飲食で捕まってしまうのであります!
そして入ったブタ箱で婦女暴行未遂の童貞のボンボンである主人公ジロウと邂逅するわけですよ!

そうね、ジロウは失踪した父親の持ち家にこの怪しげな老人達がヤマタイ国を建国し住み着いていることを知り、おや?このジジイ共が父ちゃん殺したりしてないだろうな?と潜入するも、あっさりと捕まり不法入国者として裁かれることになるのであります!ひゃー!
果たしてジロウの運命は?童貞のまま果てるのか?スンスン

マシンボーイはね、殿山泰司さんの演じる文部大臣が1番好きやったねぇ!他国から攻め込んできた暗殺者集団との戦闘になる活劇シーンで文部大臣がハチマキ締めるシーンは腹抱えて笑った、かわいい、最高……、からの聖者ダンスでお見送り、スンスン
総理ら閣僚の面々が童貞の大切さを説くシーンには、くぅ…こんな政治家いたらまぢ信用しかないのに!なるん必至やし、陸軍大臣の田中邦衛は…過去一かっこいい田中邦衛なんちゃう?

うん、個性豊かな閣僚たちによる政治モノ?として優秀な作品ですし
あとねぇ、マルが犬って聞いたときはウキウキするもまさかのブス犬でマシンボーイは地団駄踏んだんやが、ジロウん家の家政婦のタミ子がまたどうしてなかなかチャーミングでしてね!ラブロマンスとしても魅せてくれますし
失踪した父親を巡るミステリーもまさかの展開に驚かされるし、財津一郎と本田博太郎の刑事コンビのバディものとしても楽しめるし、もちろんヤマタイ国とその領土を巡る戦闘もなかなかにスリリング!そんなとこ撃つなんて…言うて何回パンツ濡らしたことか、スンスン、なんと言っても寺田農が暗殺者はまずいやろぉ、ビクビク
そして、ラストの明るさの隅っこに佇む寂しさにマシンボーイの小さなお胸はギューッと締め付けられたともさぁ

うん、そんなジャンルレスではちゃめちゃ楽しい上に、めちゃめちゃ豪華キャストな本作なんやが、ATG作品ってことで製作費はかなり少なめ……
そんなこんなで、舞台となったお家は喜八監督の御自宅だとか!ブルジョワの家か?ヤマタイ国か?どっちやー!(たぶんブルジョワの家の方よね?)