りっく

ウェンディ&ルーシーのりっくのレビュー・感想・評価

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)
4.3
住所も電話番号も金も職もないウェンディ。そんな彼女が唯一所有している車や愛犬さえも手放すことにならざるを得ない状況に至るまでの葛藤や苦悩に胸が詰まる。そしてミニマムでシンプルな物語でありながらも、どこまでも続く線路を劇中で印象的に挿入することで、どこか個人の人生と世界の関係性さえ描いてみせるような無限の拡がりさえ感じさせる傑作。

もはやどこにも「存在」していないに等しいミシェル・ウィリアムスの顔をきちんと画面に刻む込むことで個人の尊厳を守り抜こうとするケリー・ライカートの意志を強く感じる。と同時に、一日中ずっとそこに立っているだけの警備員の老人の「存在」が拠り所となる人間と人間の血の通った関係性のささやかな美しさを見逃さないところが素晴らしい。
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