ごとう

パリ、テキサスのごとうのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
4.1
淡々と静かに進行していくロードムービー版「クレイマー、クレイマー」というのが途中までの感想でしたが、終盤トラヴィスが「のぞき部屋」でマジックミラー越しに妻と再会し、告白するシーンで一転。

かつてトラヴィスは妻ジェーンを愛する余りの妄想嫉妬をし、距離感を間違えるあまり、大事で大事で仕方ないその人を傷つけてしまう。
そして家庭崩壊。 ・・・・・痛い。 

不器用で身勝手なダメ人間なんだけど、トラヴィスの気持ちがジーンと伝わってきた。
男は自分が作りだした「嫉妬」に狂いだす。 
女にも嫉妬させようとする。 嫉妬だけが愛の証だと信じる。 

相手が嫉妬(関心)をするかしないかで愛の深さをはかろうとしたトラヴィスの姿が自分と重なった。 

自分が嫉妬する分だけ、相手にも嫉妬して欲しい。 
自分が好きな分だけ、相手にも好きを求める。
相手ではなく自分を愛してる。 
相手への愛のように見えたもの=自分が可愛い自己愛。
トラヴィスはそれに気が付いたからこそ、また妻と息子から去る。
 一緒にいるとまた壊してしまうという事がわかっているから。 
臆病に見えるかもしれないがなんとも悲しいラストだ。 

幸せを象徴していた8ミリフィルムのホームムービー、約20分のマジックミラー越しの会話、 「ママの髪、ぬれてる」ホテルでの母子再会のシーンが印象に残った、重くて切なくて泣ける映画でした。 
ごとう

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