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恋する女たちのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

恋する女たち(1969年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

原作はD. H. ロレンスの長編小説(1920年)。主人公の一人、ルパート・バーキン役のアラン・ベイツの外見は、かなりロレンス本人に寄せている。

ケン・ラッセルの映画版を久しぶりに観て、改めて衣装の素晴らしさに感銘を受けた。

原作の忠実な映像化である。

アーシュラ、グドルーンのブラングウェン姉妹と、ルパート・バーキンという視学官、ジェラルド・クライチという炭鉱主の跡取り息子の恋愛を描く。

ローラ・クライチの結婚式の日、ジェラルドの母親がジェラルドの頬へのキスを避ける。母親に愛されなかったことから、彼の女性不信が醸成されたという設定だろうか。二人の後ろ姿でそれを見せる、細かい演出。

炭鉱で自らの顔も黒くしながら炭鉱夫たちの働きぶりを検分するジェラルド。彼が導入した機械が一瞬映るが、あの筒の中でグルンっと樽状のものを回転させる機械は何だろうか。

ハーマイオニからアーシュラへバーキンの関心が移ったロシア・バレエのシーン、水牛を脅かすグドルーンのモダンダンスシーン、チャイコフスキーのレコードに合わせて、クレオパトラのコスプレをしたグドルーンがポーズをするシーンなど、文化的引喩が多い(チャイコフスキーは、家名を守るために家族を持ったホモセクシュアルで、レルケも若い男を同伴した同性愛者として描かれる)。

前作の『虹』の終盤で、アーシュラは野生の馬に追いかけられ流産している。しかし続編の本作では、ジェラルドの太ももに抑えられて動けない馬に同情を寄せている。

アーシュラの台詞、"Well, I shall leave it to you to send your new, better idea down from the holy altar. When the world is ready, of course."(「ご高説を説教壇から説くのはお任せする。もちろん、世間にそれを聞く準備ができてからだけど)は、独特の理想論を説きがちなバーキンを相対化する知性の持ち主としての彼女を表している。元恋人のハーマイオニは、彼の理想論に別の理想をぶつけ(正確には物理的にラピスラズリで彼の頭を殴りつけてだが)、破局したのだ。

バーキンの理想は、「女の愛と男の愛を同時に求める」ものだったが、ジェラルドが雪山で死んだことにより、いったん挫折する("He should have loved me. I offered him.""I wanted a man friend.")。しかしそれを諦めない姿勢を示すことで、「そんなことは不可能」「私だけじゃ不満なの?」というアーシュラにショックを与える場面で終わる。ショックを受けたアーシュラの表情は小説版にはないもので、映画による翻案であると言える。

鮮やかな色彩感覚で、原作のコスモポリタンな雰囲気を再現している。
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