こたつむり

婚前特急のこたつむりのレビュー・感想・評価

婚前特急(2011年製作の映画)
4.0
♪ たとえ勝てはしないゲーム
  でも どうにかなるの
  過ぎてゆく 季節の中

とても面白いラブコメでした。
要約するなら「ビッチな主人公が振り回される物語」なんですけど、印象が悪い主人公が次第に愛しく思えるのは…演じた吉高由里子さんの存在感ゆえ。彼女の魅力があるからこそ、成立する作品です。

あと、配役の妙もありました。
主人公が五人の男性の中から相手を探す…というのが前半の流れなんですが、僕は世事に疎かったので、本命を見逃していたんです。というか、ただの端役だと思っていたんです。

それが気付けば物語の中心にいる…。
その展開がとても驚愕に満ちていて。
やっぱり、映画は事前情報を仕入れない方が楽しめますね。

また、主人公の友人を杏さんが演じたのもポイント。刺々しい彼女を包み込むような優しさを見せてくれるので「あれ?主人公って本当は良い娘じゃないかな」と思ってしまうんです。本当に配役が神懸っていました。

ちなみに仕上げたのは前田弘二監督。
『夫婦フーフー日記』は微妙でしたが、本作くらいにコメディに振り切れた方が“視線のやさしさ”が活きる監督さんなのかも。

脚本は高田亮さん。
『さよなら渓谷』や『そこのみにて光輝く』などのシリアスな脚本を手掛けながら、本作のようなコメディも書けるのは、とても幅が広いスタンスですね。地味に感嘆です。

まあ、そんなわけで。
「結婚が幸せの終着駅ではない」とか難しいことを考えずに、ひたすらに配役の妙と軽妙な脚本を楽しむべき作品。往年のスクリューボールコメディが好きな人ならば相性が良いと思います。

ただ、あえて難を言うならば。
着地点に向けた展開はちょっと強引でした。でも、考えようによっては、その強引さが“先を読ませない”ことにもつながっているんで、短所は視点を変えれば長所になる、そういうことなのかも。これって結婚生活と同じですね。
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