matchypotter

男はつらいよ 寅次郎心の旅路のmatchypotterのレビュー・感想・評価

3.8
1989年、昭和64年でもあり、平成元年でもあるこの年の作品。
なんか、冒頭からそういった激動の時代の移り変わりの勢いというか、混乱というか、古き良き文化と新たに入ってくる目まぐるしい日本がここにある。

『男はつらいよ』シリーズ、第41作品目。

さくらちゃんと博が、満男の浪人による悩みを抱えて2人で土手を歩く風景、、、時代を感じるが、世代的に妙に懐かしい。

笹野武史、今回はちゃんとした車掌役、と思ったらとんだ災難が。田舎の1両しかない電車に投身自殺を図る男が、、、柄本明。

柄本明、やはり信じられない存在感。“うつ病”で悩む男。
渥美清、笹野武史、柄本明。この3人で旅館でどんちゃん騒ぎ。スゴいメンツでめちゃくちゃ楽しそうで羨ましい。

過酷な競争社会である現代で生き抜くも少し疲れてしまったしがない“お面を被ったような顔の”サラリーマンと、昔からどこ吹く風の“四角い顔の”渡世人。

海外にちなんだ話としては最高に良いコンビ。
どこに行くのかは風に聞く。柄本明が羨むのも少し理解できる。

「お前、どこ行きたいんだ?行きたいところぐらいあるだろう?」
「寅さんが行くところならどこでも」
「って言ったって、どっかあるだろう?」
「あるにはあるんですけど、少し遠いところでして」
「どこだよ?言ってみろよ。」
「“ウィーン”です。」
「“湯布院”か。」
「いえ、“ウィーン”です。」
「知ってるよ、“湯布院”だろ、九州の」

もうこの2人のやり取りだけで十分笑える。
この出会いで、寅さん、まさかの外国へ、、、。

ウィーン。
柄本明にほぼほぼ強引に連れてこられ、まさかの現地で迷子の寅さん。
そこで知り合う現地のツアーガイドの竹下景子。このおばちゃん、淡路恵子、あの三船敏郎の回のおばちゃん。このおばちゃん、素敵。

竹下景子、“綺麗”と“可愛い”の間みたいな。
こんな女性とウィーンで出会えるなんてなんたる幸運か。
やはり、寅さん。日本でも海外でも、持ってる。

「寅さんは普段は何してるの?」
「行商人ってことにはなってますけど、まぁ、スパイみたいなもんです」

寅さん、今日も、キレッキレだわ。

いつもの日本の原風景も素敵だけど、たまには今回のような海外の風情も良い。
このドが付くようなジャパニーズ“風天の寅”が、海外、それも音楽と芸術の都、ウィーンで炸裂。

風景は明らかにヨーロッパの自然や街並みなのに、寅さんが映るとなぜか下町や日本の風景に見えてくる不思議。

柄本明と現地の女性との出会いもとても素敵。
ヨーロッパの川のほとりでオレンジの皮を剥く竹下景子も綺麗だし、日本の民謡歌い出す寅さんもこれはこれで良い。

競争社会で生きにくいことがあっても、日本の故郷を離れ海外で生きていても、異国で水や空気や文化が違くても。

強烈な生命力と強運と、彼なりの覇道で、いつも通り、周りのもつれた事情に首を突っ込んで、かき混ぜながら、安請け合いしながら、他人が踏み切れないやり切れないことに手を貸す。

どこにいても、寅さんは寅さん。寅さんの大和魂はウィーンでも通用した。

「寅の人生そのものが、“夢”みたいなものですから」

御前様、まさにその通り。

「おい、さくら、俺は、本当にウィーン、行ってきたのかね?」

今日も柴又の日が暮れる、、、「ダンケ!」。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
TSUTAYA DISCAS運営の映画コミュニティサイト「Discover us」にて同アカウント名でコラムニストをさせて頂くことになりました。
https://community.discas.net/announcements/ib1wyncr43idknqm
別視点で色々映画について書いていこうと思います!ご興味ある方は是非お待ちしております!
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


F:2260
M:1484
matchypotter

matchypotter