このレビューはネタバレを含みます
「子供を作る気がないなら、別れて」
ろくでなしカメラマンの夫と、その夫に振り回される妻の物語。傍若無人な豊川悦司が薬師丸ひろ子に酷いことを言いまくり、愛想を尽かした妻は出ていってしまう…という風に見える話。
途中で妻が死んでるのがわかった時はビックリした…。そこまで結構コミカルだったので、え、マジで…?と思った。序盤、妻が帰ってきたのに浮気相手が気づかないのもフリだったのか。「俺の健康はお前に関係ないだろ」が伏線になってるとまでは思わなかった。所々ディテールが気にはなるが、中盤の死のアイデアが秀逸。そこから一気に切ない物語に変わった。
離婚記念に写真を撮るシーン、妻の写真を回想とともに振り返るシーンにグッとくる。不器用な豊川悦司が妻へ愛を伝えなかったことを悔いる場面は泣けてしまう。生きてるうちに愛は伝えないとだな。
2回観てみると、いまだに妻の目を気にする豊川悦司を哀れみの目で見る井川遥の反応や、石橋蓮司が水川あさみに「絶対あたしより先に死ぬんじゃないわよ!」とキレるリアクションの意味がわかって面白い。石橋蓮司は本当に良い役者。
観終わると井上陽水の「夢の中へ」を口ずさみたくなる映画。
以下、セリフメモ。
「二人で一緒に行くんだよ、子作り旅行♪」
「にんじん茶っていってね。最初は抵抗あると思うけど、慣れるとクセになるから」
「実はこの1年、1枚も撮ってないんだ。この写真、女房なんだけどさ…死んだんだ。それ以来何も撮れなくなった」
「あなたって嘘ばっかりね。浮気はしないって言ったくせに浮気ばっかりする」
「ごめん、エッチ中止」
「蘭子(アイツ)には、もう俺のこと先生と呼ぶなと伝えてくれ」
「差別されなかったらオカマやってる意味がないじゃない!」
「なんでお前みたいな若い奴がさくらみたいなオバちゃんにこだわんだよ?大体なんだよ"さくらさん"って。"先生"って言えよ"先生"って」
「そっか…。じゃあもう一人で暮らせるね」
「実は、妊娠したの。今お金なくて、とりあえず10万円貸してくれない?」
「子供の心配はいらない。僕が面倒見る。結婚しよう」
(結婚指輪を返して)
「ごめん、好きな人がいるの。一年前から」
「ねぇ、写真撮ってよ。離婚記念。最後くらいいいでしょ?」
(写真を撮りながら)
「いいよ、もっと俺を見つめて」
「…じゃあ、行くね」
「お前さぁ、本当は出て行きたくないんだろ?だからいっつも忘れ物するんだろ?」
「男ができたから別れるんじゃないよ。なんでわかんないの?終わってたんだよ、私たち。一年以上前に。とっくに終わってた」
「被写体に興味があればあるほどいい写真になるって言ってたよね?昔はそう言って、私の写真たっくさん撮ってくれたよね」
「本当に出ていったと思った?」
「お前さ…なんで死んじゃったの?」
「メリークリスマスじゃないでしょ!乾杯でもない。さくら、クリスマスに死んだのよ。北見ちゃん忘れちゃったの?」
「北見さんを一人にしておかないようにって、ブンちゃんから毎月20万円もらってたんです!」
「な〜んだみんなダメなんじゃん。いい歳した男が3人もいて、みんなダメなんじゃん」
「オーディションも病院も行けなかったの!もう私の人生台無しよ!」
「蘭子ちゃん!僕が幸せにする。絶対一生幸せにする。好きになってもらうよう頑張るから。蘭子ちゃんとお腹の子が、ずーっと笑ってられるよう頑張るから」
「子供に先に死なれた親の気持ちがどんなだかわかる?」
「さくらはね、あんたと結婚して幸せだったわよ」
「オッサンに何がわかんだよ」
「わかるわよ!親だもの」
「俺なんでお前にもっと優しくしなかったんだろうな?俺はお前がこんなに早く死ぬなんて思わなかったんだよ。これからはお前のいうことなんでも聞くから。浮気もやめるしちゃんと働くし子供も作る。近藤こそお前を大事にするから。俺ちゃんとするから。だから側にいてくれよ」
「知らなかったなぁ。あたしのこと、そんなに好きだったなんて」
「なんで生きてるうちに言ってくれなかったの?」
「あなた…ありがとう」
「北見ちゃん、さくらのことを大事に思ってくれてありがとう」
(遺影に向かって)
「…行ってきます」