このレビューはネタバレを含みます
「水は常に下へ下へと流れるものだ。上流でしたことは下流に住む人々に必ず影響を与える。だからこそ上の者には責任が伴うのだ」
長野県の美しい田舎町に、急にグランピング施設建造の話が持ち上がり、町に二人組の担当者がやってくる話。
これはダークな『平成狸合戦ぽんぽこ』だ…。最後、芸能事務所のおっさん(施設の管理人志望)が絞殺されたのにはビビった。
面白かったのは、説明会のバチバチと車中の会話。この2つがあったことによって、悪人に見えた髙橋と黛にも葛藤が見えてくる。そして彼らに感情移入したところで、最後の殺人が起きる。
「娘の失踪」「黛のケガでの離脱」「人を襲わないはずの鹿の出現」という偶然が重なったことによって生まれた悲しきラスト。
初見は「え、これマジでどういうこと…?」と思いながら見ていたが、かなり考察の価値のある終わり方だと思う。
長回しの撮り方が多く、木挽町の美しさを存分に見せつけられた上での衝撃だったのでビックリした。「便利屋」ってそういう意味…なのか…?
以下、セリフメモ。
「私、ここの水に惚れて、うどん屋をやるために移住してきたんです。私にとって水が変わるということは、天地がひっくり返るようなことなんです」
「キャンプファイヤーでもしたりしたらどうするの?東京からここにくる人たちは、ストレスを投げ捨てに来るのよ。24時間体制で管理人がいるのは譲れない」
「感情的になるのはお互いにとって良くないことですよ」
「は?」
「何事もバランスが大事だ」
「わかってるよ。国の補助金目当てなんだろ?お前らの小銭稼ぎに俺たちを巻き込むな」
「便利屋さんに管理人をやってもらうのはどうですか?」
「黛、仕事辞めたら?」
「言いませんでしたっけ?私、介護士だったんです」
「私が彼女じゃなくて良かったですね。髙橋さん、マッチングアプリやってるんですか?」
「この業界は想像通り。クズだらけでした。でも綺麗事がなくて、私は好きなんです」
「俺、仕事辞めてあっちに移住しようかなぁ。あ、なんかしっくりきた」
「この10年間で、薪を割った瞬間が一番気持ちよかったんです」
「私、鹿が施設を通るっていうの、そんなに悪いことじゃないと思うんです」
「じゃあ鹿はどこへ行くんだ?」
「…どこか別のところとか?」
「花ちゃんが行方不明になりました」