あああ

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーのあああのレビュー・感想・評価

4.1
ドタバタコメディと哲学的思索!

紀元前の荘子から続く、存在に対する疑い。私達の世界は本当に現実なのか。夢の中の私達に実存はあるのか。難解な哲学講義が始まりそうだけど、考えることを許さない鬼のハイテンポのせいで(おかげで)、めんどくさい雰囲気にはならず、あくまでもコメディとして進行する。

ラストで主人公のあたるは夢の世界を捨てて、現実を選んだように見えるけど、実際の所そこが現実であるという確証は無い。でもそれは視聴者たる僕達にとっても同じことで...

インセプション、パプリカ、マトリックス、この辺の映画が好きなら絶対好きになれる。


この映画で描かれる夢はある意味、映画でもあるのかなと思った。夢邪鬼を映画監督として見れば納得がいく。そう考えるとむろぼしという混沌と戦わなければならない無邪気に尚更同情してしまう笑

夢の世界でコンビニの商品は何故か補充されるし、新聞もなぜか届く。この世界には新聞配達員もコンビニ店員もいないのに。ハンマースホイの絵画みたいな、誰もいないのに誰かがいた痕跡だけがあるという恐怖を感じた。
劇中でこの不可解な現象は、そこが現実ではない夢の世界だということを強調するために使われているけど、今の僕達の生活はこの夢の世界にかなり近づいていると思う。注文ボタンをクリックすれば荷物はいつのまにか届いているし、スイッチを押せば電気がつき、蛇口をひねれば水が出る。これが加速して、誰とも合わずに生活を完結できるようになれば、夢と現実の境目はどんどん曖昧になって、自分の存在を確かめる事も難しくなるんじゃないかな。映画の内容とはあんまり関係ないけどハイデガーの世界内存在を思い出した。
あああ

あああ