塔の上のカバンツェル

西部戦線一九一八年の塔の上のカバンツェルのレビュー・感想・評価

西部戦線一九一八年(1930年製作の映画)
3.7
不覚にも本作の存在を今まで知らず…

1930年代のドイツ製作による第一次世界大戦を扱う戦争映画。

アメリカ製作の「西武線線異常なし」と比較されることも多いされるが、本作はまごうこときなきドイツ人によるドイツ兵の映画である。

ナチ体制直前の製作ながら、非常に反戦的というか、ゲオルグ・ヴィルヘルム・パープスト監督のリアリズム志向の画造りによって戦場の残酷さを直線的に描写している。

長回しのような固定したカメラに延々とフランス兵が突撃してくる場面などは、後年のキューブリックの「突撃」のフランス兵突撃場面などに多少なりとも影響与えてそうだなと。
(見せもの小屋での女の踊りなども)

本作は、ルノー戦車が登場するんだけれども、白煙に朧げにシルエットが浮かび上がる描写などは、不勉強ながらも当時の先駆的な表現だったのでは?

軍人然とした部隊長が最後には発狂してしまう様は、シェルショックを描いていたり、フランス兵とドイツ兵が同じ床に横たわって同士よ…などど呟く場面などはモロで反戦的。

本作は1918年の大戦末期が舞台なわけだが、満身創痍のドイツ軍が描かれる。
当時のドイツ国内が"背後からのひと突き"論でユダヤ人排斥に向かっていた世情に対して、"いや、十分敗北に向かってたじゃん?"という監督のド直球の反論も伺える。

困窮に飢えるドイツ国内の市井の人々のドロドロの人間模様や、若い学生が人知れず泥の沼に沈んでいく地獄の塹壕戦など、見るべき点が非常に多かった。

第一次大戦ポイントとしては、部隊長のヘルメットが耳の部分が特徴的なM-18ヘルメットだった点も。