あかっか

真夜中のピアニストのあかっかのレビュー・感想・評価

真夜中のピアニスト(2005年製作の映画)
4.0
2023_095

ごめん、こんな生き方しかできなくて

汚れた手が奏でる美しき音色たち


不動産ブローカーとして闇で暗躍する主人公トム。実は亡くなったピアニストの母と同じ様にピアニストになることを夢見ている。その夢を叶える為オーディションを受けることになるが、仕事や身勝手な父の世話など次々と問題が降りかかる。

トムがピアノと対峙する時にだけ見せる恍惚の表情が堪らない。それと正反対に指を噛み哀しみを堪える表情もまた堪らない。


以下、ネタバレあります。


トムは自分の人生を仕方なく生きている。そんな仕方ない人生にも誇りはあって、また身勝手な父に対しても呆れつつも愛情を見せる。亡くなっている母に対してはより強い愛情を感じさせるシーンもあり、トムの人間性を何層にも重ねて描く。彼は人を憎みつつもその憎しみより深く愛してしまうのだ。

終盤、復讐を果たす場面もトムは最後の一線を超えない。それはトムの愛ゆえだと思うことにした。決して怖かった訳ではない(しかしトムは恐怖には弱いのだけれど)

レッスンシーンをもっと長く観ていたいという気持ちになった。またベタだけれどトムが大観衆の前でピアノを演奏し喝采を浴びるシーンも見てみたかった。しかし、それではこの映画の良さは消し飛んでしまうのだけれど。

自分の人生に仕方なく納得している方にオススメします。
あかっか

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