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ヤンヤン 夏の想い出のニシのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
5.0
祖母を、全ての言葉を飲み込んでしまう暗闇から寄り添い身体を持たれさすことを許してくれる樹木へと昇華させるシーンが1番グッときた。なにより行き止まりのような空間として示される家、父の職場、学校において、窓を開けると鳩が一斉に飛び去りそれを受け入れるイッセー尾形の存在。父と父の懇意にしていた女性が日本を歩く足取りはなぜあんなに美しいんだ、目的なんてない、ただ単に歩くだけの男女。絶対的にジョンフォード的なつるやホテルのショット。そこでも暗闇は虚空へと消え去り女性はいつのまにか映画を去る。「牯嶺街少年殺人事件」の人が厳格に出入りするフレームに比べて、今作は空間や道中に人物が漂流しているような印象を受ける。エドワードヤンが提示する笑いは、所謂共感性の笑いの傾向が強い印象を受けるが(出産の祝いでイかれた女を出したり、帰宅したら母親と英語教師が不倫してたり)、その笑いがそのまま死の香りを漂わせていくのが興味深い。自分の、コメディに対する向き合い方の一つの指針だ。そしてエンドクレジット、蓮實重彦先生と永六輔の文字に涙してしまった。
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