MitsuhiroTani

プロメテウスのMitsuhiroTaniのレビュー・感想・評価

プロメテウス(2012年製作の映画)
3.9
観る機会のなかった前日譚。コヴェナントを観る前に。
お酒を飲みながらサクッと観たので理解が十分できたか自信はないが、本音を言えば、意外に面白かった。
ただ、傑作「エイリアン」の延長線にある面白さというよりも、イギリスのパブで、アメリカ人の映画制作関係者が、エールを舐める老人リドリースコットと、「前日譚を作るなら」「ヒットさせるには」といったネタで、ヘベレケになりながら延々議論した勢いで作った印象。
エイリアンに対するリスペクトと、リスペクト故に背景的ストーリーを神格化させたいとう勢いと、時代に合ったヒット作にすべきと言う主張が上手く混ざらず、そのまま一本の中で自己主張している感じ。
「エイリアン=クリーチャー=創造物」的な視点と「創造主」「終末論」と言うキリスト教的思考がベースになっていること。創造主そのものを弱体化させた種のクローンを人間として地球に放ったところはアダムとイヴ的な発想だし、完成度の高いクリーチャーを生物兵器として大量に培養し、人類を一度すべて滅ぼし、人類の世界を再構築することを意図していたなら「終末論」にも近い。
酔っ払っているから全ての生命科学や進化の歴史を薙ぎ倒してしまうのは致し方ないことだけど、様々な価値観の鑑賞者がいるのだから、こうした価値観を扱うならもう少し丁寧であるべき。
単体映画としては面白かったし、驚異的な映像とビジュアルのセンスはやはり巨匠の真骨頂だと思うけど、演出に「エイリアン」映画本来の恐怖は一切なく、ノオミ・ラパス、マイケル・ファスベンダー、イドリス・エルバ、そしてシャーリーズ・セロンといった”売れる”俳優、個人的にも大好きな俳優が散りばめられ過ぎていたこともあって、とにかく深く恐怖を味わえなかった。酔っ払っていたせいかな。

追記:テレビドラマ版を手がけるクリエイターのノア・ホーリーが、興味深いコメント。「1作目で説明されたように、“完璧な生命体”とは数百万年もの進化の産物であり、宇宙の彼方で百万年前から存在していたかもしれないもの。結局、"生物“作られた生物兵器でした”というのは、本質的には無用な発想」、「一作目、二作目は、過去の時代に思い描いた未来像であるレトロフューチャリズムの産物。だから前日譚なのに、それより進んだホログラムなどが出てきては筋が通らない」。なんとなく自分の言いたかったけど、上手く言えなかった違和感は、この人が的確に語っている気がする。
MitsuhiroTani

MitsuhiroTani