最近お仕事でアートの文脈に(少しだけ)携わっていることもあり、知人からお勧めされた本作を鑑賞。
日本人の女性監督によるドキュメンタリー作品。
あらすじ。
「ハーブ&ドロシー夫婦は、ニューヨークの現代アート界きっての有名コレクター。彼らは30年以上にわたり日々ギャラリーやアーティストらを訪ね歩き、少しずつお気に入りの作品を買い集めてきた。今では20世紀を代表するアーティストに成長した画家による名作も数多くあったが、彼らの1LDKのアパートはすでに収納の限界を超えており……」(Yahoo!映画より)
「ニューヨークの現代アート界きっての有名コレクター」と聞くと、なんか超絶ハイソサエティーな方々をイメージするけど、実際には、狭いアパートに住んでいる、決して裕福ではない普通の老夫婦。
彼らが集めたアートは現在では時価ウン億円(もっと?)の価値があるらしく、世界のあらゆる美術館から作品の購入オファーがあるも、彼らは決して売らない。
しかも最終的に、年齢的に今後の作品の管理について課題を感じた彼ら(だって、狭いアパートに所狭しと作品を置いてるの)、なんと、ニューヨークの美術館に作品を無償譲渡したのだった。
彼らがなぜ、30年にもわたり、少ない収入からアートを購入し続けてきたのか。
そして彼らはなぜ作品を決して売らなかったのか。
そして彼らはなぜ、最終的に作品を無償譲渡したのか。
ここら辺を理解することで、「アートの価値とは?」「人間にとってアートとは?」みたいなことへのインサイトが得られるのでは?という目論見のもと鑑賞した次第。
その結果、最高の結果が得られた。
なんと。
アートのことがもっと分からなくなりました!!
何かを理解しようとして学び、その結果、より分からなくなるって、知的活動で得られる最も大きな成果だと思うの。
それっておそらく、問いがよりブラッシュアップされた結果なのよね。
だって彼ら、全く特別なことはなく、めちゃくちゃフラットなのよ。すんごく等身大で生きてるだけ。
ただ一つ特異なのは、彼らの熱意。しかもその熱意も、燃え盛るような熱意ではなく、「え?だって好きなものだったら少ない収入の中からでもやりくりして買うよね?ほえ?」みたいな、平然とした熱意で。
私、彼らのこの「当たり前のような熱意」に打ちのめされてしまい、特に感動的な作劇をされているわけでもない本作を観ながら、なぜだか落涙してしまいました。。
そうなると、この作品って「アート」がテーマというより「人間の熱意」がテーマのように感じるな、と思っていたら、本作の監督さんがインタビューでまさにそういうことをおっしゃっていた。俺には伝わったぜ!
自分の出来る範囲で、好きなものに情熱を傾け、それをただひたすら継続していく。
いやよく考えたら、これって「人間が生きる意味とは?」に対する回答になり得るやつやんけ!
ということでめちゃくちゃ良い作品でした。
続編も出ているようで、絶対観ます!!