あなぐらむ

青年の樹のあなぐらむのレビュー・感想・評価

青年の樹(1960年製作の映画)
3.7
石原慎太郎の原作を弟・裕次郎が演じる青春篇。やくざの子として産まれたが故、「正しい人」であろうと大学に進学し、自分を模索する中で様々な境遇の若者と出会い苦悩する青年の姿。慎太郎らしいインテリを自問するような物語に、社会派エッセンスがまぶされている。

貧しい港湾労働者の青年が裕次郎の対局として描かれ(とり仕切るやくざが裕次郎の父、芦田伸介)、彼が学生運動からテロルへと走ったり、ヒロイン・芦川いづみの母が汚職政治家の二号だったり、戦後世代が旧来の「家」や大人社会とどう向き合うかが本筋で、東映任侠映画のような爽快感は無い。
最後はやくざ抗争の後、跡目を継いだ裕次郎が退学になり、それに学生達が抗議し行軍する所で終わるんだが、これがどうにも座りが悪い。日活は組合が強かったからそれを感じさせる気もするが、連帯しちゃったら個の自立にならなくね? ていう。原作はどうなんだろう。

もっとも時代は60年代初頭、まだ学生運動の末路も知らない時代。まだまだ家族幻想があったろうし、事実この物語の中では、北原三枝という義姉を見つけていく辺りは血縁の物語でもある。
しかし舛田監督の映画では女は目立たないね。笹森礼子がニュースターとしてお目見えしているが地味な役。