茜

スリープレスの茜のレビュー・感想・評価

スリープレス(2001年製作の映画)
3.2
17年ぶりに蘇った連続猟奇殺人犯を引退した老刑事と当時幼い少年だった目撃者の青年が追うサスペンス。
公開当時はアルジェントの正統派ジャーロへの原点回帰とか何とかで話題になったらしい。

ヒロインかと思われた女性達が次々と残忍な方法で惨殺されていく序盤。
個人的にはこの「電車での追いかけっこ」がピークで、決して面白くない訳ではないし、寧ろ夢中になって最後までしっかり見届けたものの映画としての後味は比較的弱い。
楽器を口内に突っ込みグチャグチャに喉を破壊するという描写はゾッとするし残酷極まりないのだけどアルジェント的な美しさには欠ける。
そういう点でもやはり序盤の電車シーンはゴブリンの楽曲も相まってスリリングな美しい恐怖があったし、ずっとこの調子で120分を駆け抜けて欲しかったと思う。
何か真面目にやりすぎちゃったのかなぁ、だからあんなに誠実過ぎる伏線を見せてしまったのだろうか。

個人的に一番死んでほしくなかった人が死んじゃってテンション下がったし、アルジェントの中でそんなに好きな作品ではないけど、ラストの銃撃はガチでお見事。
ここだけでも100回くらい観たくなるし、あのキレッキレな勢いとアングルは流石としか言いようがない。
真面目で整然としたジャーロを撮ろうとしたアルジェントの鋭利な狂気がラストで一気に爆発してしまったんだろうなと勝手に想像している。
茜