トムヤムくん

チョコレートのトムヤムくんのレビュー・感想・評価

チョコレート(2001年製作の映画)
3.5
目の前で息子が自殺した黒人差別主義者の男と、旦那と息子を失った未亡人の黒人女性のラブストーリー。いやーーー。複雑。つまらないわけじゃないけど、気になる点が多すぎる。

まず人種差別、死刑制度、親子の確執など、様々なテーマが入り乱れる中で、暗くて重いラブストーリーを軸にすることでその全ての要素が掻き消されているのが残念。

そのせいで、結局裕福な白人男性が貧しい黒人女性に手を差し伸べる物語になってしまっていたし、どこにでもよくある「喪失と再生」の話になっていたのも勿体ない。もっと色んなテーマに絡めることができたはずなのに、話に起伏がなくて一辺倒に感じた。

また息子が亡くなったからとはいえ、あんなにもひどい黒人差別主義者だった男が、ここまでスッキリと心を入れ替えて、なおかつ黒人女性に恋愛感情まで持てるものなのだろうかという疑問も凄かった。

現実では全然有り得ることかもしれないけど、個々のキャラクターの描き方が淡白すぎて全く共感できなかった。性行為でしか愛を補う方法がないのも好きじゃない。

それにどうせラブストーリーにするなら、もっと丁寧に恋愛描写も描いて欲しかった気持ちがある。

主演のハル・ベリーは本作で黒人女性として初のアカデミー主演女優賞を受賞したけれど、どうなんだろう。濡れ場のインパクトこそあったけれど、なんとなく「黒人初の主演女優賞」という歴史的快挙を見たいがために選ばれたんじゃないかと疑ってしまうほどキャラクターに魅力がなかった(あくまでキャラクターの話であって、彼女の演技自体は素晴らしかったけれど)。

この手の作品で誰にも共感できないまま終わってしまったのが本当に悔しい。主役の二人に対して嫌悪感すら抱いてしまった。良い話ではあるのになー。なんか勿体ないなあ。