あなぐらむ

複雑な彼のあなぐらむのレビュー・感想・評価

複雑な彼(1966年製作の映画)
3.9
三島の通俗小説を材に、サンフランシスコやリオ・デジャネイロにもロケした観光ロマンス映画なんだが、これがまぁえらい所に着地するんだ。田宮二郎が自信をもって臨んだというイケメン完璧超人ぶりが痛快。

男からしても女から見てもミステリアスで、何でもできちゃうパーサー・田宮に惚れちゃうお嬢様に大映美人では珍しい?ノーブル系の高毬子。令嬢役だけに服装もファッショナブル。
田宮を廻る女達にスッチーな渚まゆみ、滝瑛子(豊乳)、真理アンヌにイーデス・ハンソンのゴールドメンバー。イェー・ベイビー・イェー!

脚本は後に「夜の診察室」も書く長谷川公之で、さくさくと差し込まれる主人公の過去エピソードの突飛な感じを、島監督はキッチュな風味で味付けし軽快に見せていく。謎の男を演じる若山弦蔵のトークも楽しい。航空機をミニチュア特技で度々見せるのも島監督らしい。ラストで突然憂国になって驚愕させられる。

全体的には緩い中編なんだが、1966年という事でベトナム戦争の陰が落ちている(劇中に台詞でも出てくる)。
主人公が最後にする決断からは、これが三島由紀夫の原作である事が感じとれたりもする(まぁ結果的にだけど)。経済成長から五輪を経て、日本も新しい時間に入った事で、物語を能天気に終わらせられないのだ。