えいがドゥロヴァウ

ハックルのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

ハックル(2002年製作の映画)
3.7
最近は前々から観てみたかった作品が観られていて嬉しい
ありがとう、TSUTAYAさん

ハンガリーは『タクシデルミア』のパールフィ・ジョルジ監督作品
『タクシデルミア』も特殊な作品ですが
こちらも何とも独特な語り口

とにかく目を引くのは
ヴィクトル・エリセの短編『ライフライン』の如き田舎の村の何気ない田園風景や人々の営みとその生活音を
脈絡があるかないか微妙なところで映し出すさまや
エミール・クストリッツァを想起させる多種多様な動物たちの演技
蛇、猫、てんとう虫、アヒル、豚(とその睾丸)、ナマズ、蛙、などなど
淡々と流れていくけれど
よくこの瞬間を捉えたなというショットの連続でした

それらに準じて印象的だったのは料理のグロテスクさ
ハンガリーの食べ物のことは分かりませんが
鶏肉料理をミキサーにかけてペースト状にする描写(歯がない旦那のため)や
料理の見た目そのものがアレだったりと
『タクシデルミア』で顕在化された食への執着と同質のフェティシズムが香ります
本作においてはこの料理というもの自体が
男と女の関係をあらわす重要なメタファーであるからこそ
そこに意図を感じずにはいられません

冒頭から所々で挿し込まれる顔面皺くちゃ爺さんのハックル(しゃっくり)が象徴する普遍の日常
音楽も台詞も皆無
登場人物の名前も一切謎
あるシーンから人物がフレームインして別のシーンにリレー形式で移ろい連なり
脚色されず提示されるそんな日常の中で
謎の小瓶の存在が何やら不穏な空気をそれとなく醸す
そして爺さんのしゃっくりによる振動が
低空飛行する戦闘機が起こす地鳴りと結びつく
この不思議なダイナミズム
(たまに使われるCGが何ともシュール)
展開としての盛り上がりがないのではなく
その盛り上がりの演出がまた独特でした

そしてこの映画が何についての映画なのかがやっと分かるのが
本編の終盤も終盤
僕は途中で我慢ができず一度寝てしまったことを告白しておきます(記憶が確かなところに戻って再鑑賞)
台詞で説明することを拒んだ本作は
とっても映画だなと感じて好きです