ちろる

わが町のちろるのレビュー・感想・評価

わが町(1956年製作の映画)
4.0
「平成」も終わろうとしようとしてる今、さらに遠くなった「昭和」を貪ろうと必死な私ですが、特に川島監督の描く昭和の粋さは、まるでタイムスリップして巻き込まれてしまいそうになるから楽しい。
主人公は一本筋の通った逞しい昭和の男ターやん。
フィリピンでの道路工事でとんでもなく大変な思いをしたせいで、他人にも厳しくひ弱そうな男にフィリピンで働いて見やがれと言っちゃう。しかもそれが冗談じゃなくって本気だから怖い。
自分が昔手つけた女に子供できた事も気がつかず、娘の彼氏にフィリピン行き強要して孫をテテナシ子にしてしまい、妻も娘も不幸にしてしまったターやんにとって、唯一残された孫娘きみちゃんだけはなんとか大切にそだてようとする。
しかしその粗暴な男の不器用な子育ては今の感覚でみりゃちょっと引くほど荒いけど、隣のおじちゃん家から抜け出してターやんじーちゃんのふとんにもぐりこんだきみちゃんを嬉しそうに見たターやんの表情ときたら・・・なんだか憎めない。
ここなんか、最近見たばかりの高畑勲監督の「じゃりン子チエ」を思い出しちゃう。

だんだんとターやんが年老いて、口だけは悪いままで、ちょっと穏やかになった感じが時間の経過を感じさせて切ないエンディング。
時代についていけなくなりながら少しずつ新時代を受け入れようとするターやんの姿を見ながら、こういう親父の存在自体が昭和の風物詩なのかもしれないとしみじみと感じてしまう今日この頃。
ちろる

ちろる