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熊座の淡き星影のkojikojiのレビュー・感想・評価

熊座の淡き星影(1965年製作の映画)
3.5
1965年 イタリア🇮🇹映画
ヴィスコンティ監督

名門家族の姉弟に隠された過去、唯一のミステリーというふれ込みだが、想像していたものとはだいぶ違った。
 
ヴィコンティの映画の中で、この映画を観ることが一番難しいと思っていた。配信もなく、レンタルに在庫もなかった。半分以上は諦めていたが、ふとしたキッカケで簡単に手に入れることができた。まさに穴場だった。
そう、「図書館」なのだ。
大袈裟にいうが、ちょっと狂喜した。
というのも、この作品だけでなく、かなりの映画がレンタルしなくも図書館で借りれるからだ。「今更!」とほとんどの方は言うだろう。でも知らない人間もいるのです。今回は大きな飛躍!


アメリカ人の夫を持つサンドラ(クラウディア・カルディナーレ)は、長い間父の死に疑問を抱いていた。夫と共にイタリアの故郷へ戻った彼女を待っていたのは、弟ジャンニ(ジャン・ソレル)からの不穏な眼差しと、義理の父からの非難だった。

まず題名、変な題名だと思ったらイタリア19世紀の詩人の詩からとった題名だそうだ。
因みに弟の小説の題名もこれと同じ設定になっている。
ジャコモ・レオパルディの詩「追憶」

『熊座の美しい星たちよ、私は思いもしなかった
父の庭の上できらめくお前たちを
故郷に帰って再び眺めようとは、
子供の頃に住み
喜びの終わりを見た』

実際こんな場面もある。

彼女が結婚相手と帰ってきた故郷の家で、夜の庭を散策するシーンがそれだ。そこで待っていたのが、弟ジャンニ。二人は久しぶりの再会を喜び抱擁し合うが、何やらおかしい、何やら違うのだ。まるで恋人同士。

「私の前て着替えをしないで!」とシャツだけ脱いだ弟を怒る姉。おかしなことを言うと思っていたら、翌日からのこの二人の仕草、会話もずっとこのまんまで、異常に感じてくる。
そしてついに隠された過去が明らかになる…

ヴィスコンティだから、こんな単純な話ではないが、基本線はこういうことになる。

サンドラのお屋敷ワルト・ルッツァンティ邸は時代に取り残された古い家具、絵画、置物、樹木の生い茂った庭、古代ローマの地下水場はまさに本物。
突然、サンドラと同じように、過去の世界に入り込んでしまう。

アメリカ人のサンドラの夫は最初は驚くが、すぐにここは長居はできない場所だということを肌で感じる。しかし、サンドラはここにきた時、すでに過去にハマり込んでしまう。

過去に取り憑かれた弟と過去を抜け出し新しい生活を始めたいサンドラの葛藤が続く。

クラウディア・カルディナーレ主役のミステリーということで楽しみにしていたが、多分ヴィコンティ好みのこの弟がやたら上半身裸になって気持ちの悪く、私には残念な作品だった。

2023.05.15視聴221
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