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マッド・フィンガーズのvizilakeのレビュー・感想・評価

マッド・フィンガーズ(1978年製作の映画)
5.0
成功が人間を安定させる。。
成り金風の高利貸し屋の父親と精神病を患う音楽家の母親、、その影響から凄腕の取り立て屋であり有望なピアニストである今作の主人公 ジミーはとにかく特異な人物である。。
両親を見ても分かる通り、彼は人格が崩れている。。
いつもラジカセを持ち歩き公共の場にも関わらず爆音で軽快な音楽を聴きまくる、好みの女性に出会うと胡散臭い言葉を並べて強引にSEXにこじ付ける、気に食わないと暴力に走る、、
要するに変人なのだ。。
関わりたく無い危ない人間だ、、と言うのはこの一連の言動を観ずとも主演のハーヴェイ・カイテルの表情を一目見れば瞬間で感じることが出来る。。
口元に力が入り目が泳いでいて挙動不審、、神経質で落ち着きのないナイーブな人間なのだろう。。
そんな彼が辛うじて人間でいられるのは、各分野でそれぞれ成功しているからだ。。
取り立てもピアノもSEXも、彼は一目置かれる存在なのだ。。
冒頭にも書いた通り、成功しているからこそバラバラの彼の心は何とか繋ぎ止められて安定している。。
不思議と順風満帆であったジミーの生活は一つずつ乱れてゆき、彼のナイーブな部分に働きかける。。
そして、人間でいられなくなる。。
この映画はハーヴェイ・カイテルの狂気じみた怪演に心が奪われる作品だ。。
第一、借金の取り立て屋とピアニストという相反する職業を両立させることが難しい。。
「こんな頭のおかしい奴は取り立ての仕事とピアニストをしているに違いない」と観客に奇妙な納得させてしまうハーヴェイ・カイテルの手腕は凄まじい。。
あまり派手な映画ではないがワンシーン毎が粒立っていて素晴らしい。。
中でもラストシーンの引きからのアップが個人的には特に好きだ。。
メタフィクション的なカメラ目線が観客を後味の悪い余韻に浸らせるのだ。。
VHSでしか観ることの出来ない不遇な名作、興味があれば是非。。
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