昼行灯

戒厳令の昼行灯のレビュー・感想・評価

戒厳令(1973年製作の映画)
3.7
スタンダードを柱や天井によってさらに狭めるような構図の切り取り方に、北一輝や将校たちの置かれた時代の閉塞感を見た。北一輝は自分では動かないし、物語の中でも冒頭の殺人以外は直接的に出来事はえがかれず、登場人物によって語られるだけなのがすごく観念的だった。北の生み出した国家改造論に心酔して青年将校たちが革命を夢見るけども、彼ら自身の思想はないから具体的な行動を起こせない。一方で北も自分の唱えた思想の大きさに恐怖して振り回されている。空虚な彼らに迫りくる破綻の足音が、しばしば映像に映されたものと関係なくなっているブザーやサイレンの音によって表されていたのかなと思った。そんななかで天皇だけが振り回されず自分の意思で皇道派を拒む姿勢を見せていて、画面には登場しないけど圧倒的な存在感があった。
あと、モノクロの画面の墨の滲み方が戦前映画のそれを思わせ、大正の時代とマッチしていたなと思う。
昼行灯

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