松田優作や木村一八の主演で後に何度も映画化されたが、その映画化第一作。
映画冒頭で刑事が夜中の住宅街で呼び止められ、サイレンサーを付けていない拳銃であっさり撃たれる。響き渡る銃声…。もうこの時点であり得ない。その後も殴って気絶させた佐藤允を自分が運転している車の後部座席に乗せる。目が覚めていきなり後ろから襲われたらどうする?アルバイトしているバーのカウンターで恋人と店や客の悪口を言う、花売りの老婆がなんか歌えと言われて歌う当時のヒット曲(「星はなんでも知っている」)など、60年以上も前の映画という事を差し引いてもあり得ないシーンの連発が気になってなかなか入り込めない。
江戸川乱歩も絶賛した大藪春彦のベストセラー小説が原作だが、これまで日本にあまり無かった、表と裏の顔を持つピカレスクヒーローがこの時代はとても新鮮だったのだろう。そしてこのエンディングも当時はかなり新しかったと思う。
演出の綻びが目立つ作品であるが、出演者の演技は素晴らしく、主演との仲代達也を始め、大学教授の中村伸郎、同じゼミの団玲子、食堂の女給の横山美代など名優達が適材適所で良い味出してる。