半兵衛

野獣死すべしの半兵衛のレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1959年製作の映画)
3.0
パラノイア仲代達矢による非情な犯罪物語はそれなりに面白いけれど、まばたきをしないし表情を変えないしは虫類のような怪物っぷりが大藪春彦の世界観とはちょっと違う気がして違和感があるのも事実。

あとさすがに60年以上たっていると、公開当時はインモラルな内容だったはずなのにそういう刺激が強靭に、過激になった現在から見るとさすがに古典的になっているのもしんどいかな。肝心の主人公がピカレスクなことをしているのに最終的な目標がアメリカ留学というのも時代を感じる。

悪いことを次々と計算ずくで犯していく仲代の凶行をドライにサクサク描いていく語り口が痛快。そして『三丁目の夕日』をはじめノスタルジックに描かれがちな昭和三十年代の裏側にある負の世界を容赦なく暴き出す白坂&須川コンビの手腕も見事。

ラストが蛇足だなと思ったら、映倫の「こんな反社会的な映画は許されない」という要請に答える形で追加撮影されたんだとか。そういうエピソードも時代を感じさせるな。

脚本のみならず出演までして百点満点のアプレゲールな演技を披露する白坂依志夫や、不気味なヒットマンを怪演する西村潔(監督、この当時は助監督)も見所。
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