松田優作版「野獣死すべし」と比較して観賞。表面的には真面目な英文学の大学院生である主人公・伊達が、冷徹に犯罪を重ねていくすがたを描いている。
昭和三十年代の風景、モノクロの映像、ロジカルな脚本、BGMはジャズ。日本の湿った風土のなかで、あたらしいタイプのハードボイルドをつくろうとしていた意気込みは伝わる。
伊達というキャラクターがどうして造形されたのか、その時代的背景を説明しようとしてのことだろうが、とくに前半部分は、大学生や刑事たちが生硬な議論を重ねる場面が目立つ。ここらへんが、いま見るといかにも垢抜けない。
しかし団令子ってのは、なんでいつもヒロイン扱いで出てくるのかな。どうみても美人の範疇からは外れていると思うのだが...。