ナツミオ

東京の女のナツミオのレビュー・感想・評価

東京の女(1933年製作の映画)
3.7
WOWOW on demand鑑賞
【小津安二郎監督特集】

名作『東京暮色』(1957)の原点

弟と2人で暮らす訳ありの姉を岡田嘉子が熱演。小津安二郎監督の初期無声映画の新音声版。「連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~」の1本としてリメイク。

英題 『Woman of Tokyo』

1933年日本作品モノクロ・サイレント47分
監督 小津安二郎
脚本 野田高梧 池田忠雄
撮影 茂原英雄
出演 岡田嘉子 江川宇礼雄 田中絹代 奈良真養
風吹ジュン 声
佐野史郎 声

(WOWOW番組内容より)
東京のとあるアパートの一室で、大学予科生の弟・良一(江川)と2人きりで暮らすちか子(岡田)。昼間はタイピストとして会社に勤める傍ら、彼女は、とある大学教授の翻訳の手伝いと称して、帰宅が夜遅くなることが最近続いていた。ところが、実はちか子が、どうやら夜、いかがわしい酒場で働いているらしいという噂を良一の恋人・春江(田中)の兄、木下(奈良)が聞き込み、それが春江の口を通して、ついには良一の耳にまで達して彼はすっかり驚き、心を痛めることに……。

(WOWOW解説より)
昼も夜も働き、大学予科生である弟の学費も稼ぎながら東京で弟と仲良く暮らす姉。ところが、彼女のよからぬ噂がいつしか周囲に広まって弟は苦悩し、思わぬ悲劇が生じることに。
訳ありの姉をサスペンスフルに演じるのは、本作から数年後、ソ連に突如亡命するなど、幾多のスキャンダルを起こし、実人生でも謎めいた波乱の生涯を送った岡田。
とある海外の作品名が原作としてクレジット紹介され、作者の生没年まで記されるが、実はこれらはすべて小津の創作。
今回放送する新音声版の声の出演は、風吹ジュンと佐野史郎。

警察ににらまれた姉の身を案ずる弟の苦悩を描いた小品で、次作『非常線の女』の本読みの日に、ローティションに穴が開いて急きょ製作を頼まれ、シナリオが完成する前に撮影を始め9日間で撮り上げたものである。小津は、この頃から画面のポジションが決まってきたと回想している。
初回興行は帝国館。
(Wikipediaより)

・オープニングで
 “エルンスト・シュワルツ
 オーストリア・1882-1928
『二十六時間』より翻案”

この作家も作品も架空であり、実際は小津のオリジナルストーリーだそう⁈

主人公、ちか子に岡田嘉子。
若い頃の草上民代に似た美人。
岡田の母方の祖父がオランダ人のクォーターだそう。
かなりの波瀾万丈の生涯で映画が何本も撮れそうな方だ。
(興味のある方はWikipediaのプロフを)

弟良一に江川宇礼雄。
イケメン、スラッとしたスタイル。
この人もドイツ人とのハーフ。
この人も波瀾万丈の人生は、岡田嘉子に負けない。
先日観た、『青春の夢いまいづこ』(1932)
の若社長役。

良一の彼女、春江に田中絹代。
やはり演技が凄い。今回は特に泣く場面に色々な苦悩や後悔の表情を魅せる。

警察官で春江の兄、木下に奈良真養

その他、新聞記者役に笠智衆‼️、大山健二。


↓ 以下ネタバレあり

【印象のシーン】
・映画鑑上映シーン
米・オムニバス映画
 『百万円貰ったら』”If I Had A Million“(1932年)
エルンスト・ルヴィッチ監督他
ストーリーには関係無し。

・デリカシーも何も無い新聞記者。
 勝手に遺族の家に上がり込み、鉛筆で肩を突くところは怒りを覚える。

・岡田嘉子と田中絹代、それぞれ対照的な演技。
岡田の昼と夜の変わりよう

そして、事件後の抑えた涙の演技

田中の後悔と悲しみの表情

姉と弟の彼女、それぞれの悲しみ。

小津監督の後期の名作、『東京暮色』(1957)と同様、同監督作品では珍しく暗い辛い内容だった。
観終わって、ややメンタルがダウンする。

小津作品の中では、異色の部類だが、
インパクトあり、記憶に残る。
これも名作だろう。




【忘備録】ネタバレなし
(キャスト)
姉ちか子:岡田嘉子
弟良一:江川宇礼雄
娘春江:田中絹代
兄木下:奈良真養
新聞記者:笠智衆、大山健二

【修復版詳細】
『東京の女』
4Kデジタル修復版/2023年

2023年版
プロデューサー 藤井宏美 橋本佳子
映像技術 藤井遼介
整音 桑木知二
選曲効果 泉清二
演出 加賀谷慧

2003年版
製作 松本行央
プロデューサー 橋本茂 藤田章 西山聡
整音 桑木知二
選曲効果 泉清二
演出 山田礼於

音楽資料協力 
菅野公子 ジネット・ヌヴー協会ジャポン

製作進行 小田島香苗

協力 
鎌倉文学館 川喜多記念映画文化財団 ムービーテレビジョン

製作協力 ドキュメンタリージャパン

監修 田中康義

製作著作 松竹株式会社
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