りょう

隣人は静かに笑うのりょうのレビュー・感想・評価

隣人は静かに笑う(1999年製作の映画)
4.4
 最初に観たのは20年以上前ですが、結末をわかっているからこそ面白いタイプの作品です。1999年に劇場公開されたハリウッド映画の傑作群の文脈に登場することはありませんが、忘れてはいけない隠れた名作です。
 序盤や中盤の描写には、これといって特別なところはありません。むしろ隣人であるオリヴァー・ラングの正体は意外と簡単にバレてしまうし、彼を疑ってきたマイケルの言動にも納得感があるので、これをサスペンス・スリラーとするなら、その醍醐味は希薄です。
 ただ、そういう展開は脚本に仕組まれた巧妙な罠で、それが驚愕のラストシーンで回収されます。「すべて夢でした」でもおかしくない究極のバッドエンドがなぜか痛快ですらありました。
 物語のテーマはテロリズムです。テロリストの思想や行動原理はさまざまですが、この作品のテロリストたちの目的は、最後まではっきりしません。そんな設定では物語が表面的になってしまいますが、あえてテロリズムの普遍性を表現したかったのかもしれません。この作品が劇場公開された前後には、1995年のオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件と2001年のアメリカ同時多発テロ事件がありました。国家の安全保障体制がひっくり返るような経過があっても、この作品に漂う恐怖は衰えていません。いつ、誰が、どんな場所で被害に遭うのか予想できないからです。
 ちなみに、この作品の脚本を執筆したアーレン・クルーガーは、2001年に「クローン」というSF作品でも“やらかして”います(かなり過小評価されている秀作です)。
りょう

りょう