正直、イブ・モンタンがこんなにいい役者だとは思わなかった。
この映画、始めから終わりまでモンタンの演じる男の独壇場と言ってもいい程、周囲が彼の強烈な性格に翻弄されながら人生を狂わされていくようにも見える。ヤクザ気質で破壊的な人間だが、情に厚くて人好きのする性格のため、どこに行っても人気者の男はモンタン自身であるかのように見えるが、実際はどうだったのだろう?
中年過ぎの男が、溢れんばかり色気を放出させながら、ひとりの女への盲目的愛とその女の過去の男への激しい嫉妬に狂うさまを余すことなく演じる俳優はなかなかいないのではと思う。
ロミー・シュナイダーは個人的に好きな女優じゃないけど、この役にはドンピシャで、美しい猫のような瞳が困惑げに揺れ動くのを見るのがよかった。