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血と砂のScriabinのレビュー・感想・評価

血と砂(1922年製作の映画)
4.0
ベン・ハーの監督ということで期待してたが期待以上だった。リズミカルなカッティング、魅力的な空間描写、伝統的表象からの数々の引用、まさに映画の黄金時代。

○象徴や代理表象が多用されていておもしろかった。哲学者の部屋には、思索する者の持物として骸骨や大きな本、地球儀、砂時計など、オランダ絵画ばりにアイテムを並べてみせる。ハンカチを媒介した遠隔コミュニケーションやマッチの比喩など、うまく映像表現に落とし込めているのも良い。指輪が象徴的なアイテムとなるところは少しメロドラマっぽかった。

○舞台がとても良い。どこで撮ったのかな。フアンの実家のある集合住宅の中庭は、ドラクロワ、ジェローム、ルノワールなどのオリエンタリズム絵画と極似しているし、コロネードの温かい空気感はブニュエルやオリヴェイラ思い出したし、設定とか色々含めてブランカニーブス思い出してしまった。侯爵令嬢のオリエンタリズム全開の部屋はまさに《サルダナパロスの死》。令嬢のアール・デコ調の衣装はF.C.Cowperに通じる。蛇のようなドレスと蛇のような女という比喩はラミアーそのもの。

○この監督の一番好きなところは中間字幕かもしれない。ベンハーの時も美しい飾り文字と額縁のデザインが素晴らしかったけど、今回はクエスチョンマークと文字の二重露光という面白い発想が飛び出してきた。中間字幕が無くなってしまったのはまじで映画の損失だと思う。

○闘牛シーンは実際の映像使ってるのかな?コロッセウムにひしめく群衆のイメージはジェロームとアルマ=タデマにしか見えなかった。

○この時代の演技は様式化されているから、見ていて本当に気持ちいい。体の軸線、あるいは人物間の軸線に対してどう動くかが常に考えられている。そしてねじれるキス!単に体が接近していくだけでは面白くないよね。捻りを入れることでドラマが生まれる。
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