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Dolls ドールズのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

Dolls ドールズ(2002年製作の映画)
4.3
近松門左衛門の『冥土の飛脚』の出番を終えた忠兵衛と梅川の文楽人形。その視線の向こうに、3つの愛の物語が展開する……。赤い紐で体と体を結んだ”つながり乞食“の佐和子(菅野美穂)と松本(西島秀俊)。かつて、松本は佐和子の愛を裏切る形で別の女性と結婚しようとしたが、そのショックで佐和子が精神のバランスを崩したことを知ると、彼女を病院から連れ出し、以来、ふたりはあてどもなく彷徨い歩き続けていた。
ある日、友人たちに婚約を公表した思い出のロッジへと辿り着いたふたり。しかし、そこを追い出された彼らは、雪山で足を滑らせ崖から転落してしまう。
迫り来る死期を感じ取った老境のヤクザの親分(三橋達也)は、ふと思い立ち、とある公園へと出かける。
そこは、若い頃に愛した良子(松原智恵子)と毎週土曜に逢瀬を重ねた思い出の場所だ。思いがけず、今も彼を待ち続ける彼女と再会を果たした親分。
彼は、正体を明かさず彼女と会うようになるが、ある日、ヒットマンによってひかれてしまう。
交通事故で左目を失い、芸能界引退を余儀なくされたアイドル・春奈(深田恭子)の元に、デビュー当時からの熱心なファンで、誰にも顔を見られたくないと言う彼女の気持ちを慮るあまり自らの視力を奪った温井(武重勉)が訪ねて来た。
久しぶりの再会。春奈は、彼のことを憶えていてくれた。
だが温井の幸せも束の間、彼は交通事故で轢死してしまう。
バイオレンス映画を得意とする北野武が、近松心中ものの文楽劇を意識した究極のラブストーリーに挑戦した意欲作。
文楽を意識して、あえて無表情に近い演技を演出することで、文字通り苦楽を生死を共にする三組の二人の道行きを、真っ赤な薔薇園や紅葉などの美しい自然とヨージヤマモトの和装の良さを生かしたデザインによる美しい衣装が彩ることで、より儚さと切なさが凝縮されたラブストーリーになっています。
中でも、西島秀俊と菅野美穂、三橋達也と松原智恵子の二人のピュアさが、印象的です。
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