ベビーパウダー山崎

神様のくれた赤ん坊のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

神様のくれた赤ん坊(1979年製作の映画)
3.5
後ろめたい気持ちも前に進む未来もすべてが平等に描かれる、清濁併せ呑む感じがまさに前田陽一の人情喜劇。序盤と中盤に用いたセリフがラストに効いてくる。シナリオというより、その仕掛けのうまさだが、それで綺麗に落とせる桃井かおりの強さ、あの顔、あの言い方。渡瀬恒彦の真っ直ぐな芝居もモチロン最高、攻めでも受けでもどのポジションでもナチュラルに包み込む桃井かおりは鬼すぎる。ラストのそれも、その前のエレベーター内の二人の表情、親密さがあったからこそグッとくる。
預けられたガキにほとんど喋らせないのが良い。ガキが逃げ出したり癇癪おこしたりして物語を広げたくなるが、そういった子どもからのベタな騒動が一切ない。つまりこれは渡瀬恒彦と桃井かおりが自ら成長する「大人」の映画であると線を引いている。監督もシナリオ作家も幼稚な手札で楽して泣かせよう、共感させようとしていない、これがとてもとても大切。